中国の先進的なスマート農業プロセス
田東は、中国広西チワン族自治区内に位置する小規模の小さな県です。美しい景色と素朴な民俗風習で知られる田東は、国内各地によくみられる、工業化でその名を馳せるといった地域ではありません。ところが現在、この田東が、中国が近年力を入れる新技術を活用した天然資源の有効利用を実証する、革新的なスマート農業プロジェクトの中心地となっています。
この20年あまりで、中国は社会的にも経済的にも著しい発展を遂げ、世界第2位の経済大国となりました。しかし、この発展により、14億にのぼる人口の食糧需要を満たす必要が生じています。作物生産の効率化は目下、国家の最優先課題であり、その意味で、田東プロジェクトのような取組みは極めて重要となります。
天成農業複合施設は 広西大学の農業科学研究者の協力のもと、広西長江天成農業事業団により設立されました。3ヘクタールの土地を覆う巨大な温室は、中国南部の生産者に高品質で安全な野菜の苗木を提供することを目的に建てられ、自動化や高度なソフトウェア制御システムなどの最新技術を駆使しています。技術導入により、複雑だった業務が変容し、温室の稼働や維持管理などが簡単に行えるようになりました。
温室で行われる主な作業の一つが、異なる二つの植物を切断面でつなぐ、接ぎ木作業です。接ぎ木によって、ある植物の結実特性を、別の植物体が持つ強健性と結びつけることができます。高度に自動化された冷蔵システムは、年間8千万本に及ぶトマトや唐辛子などの接木苗の成長に最適な環境を整えます。温室では、接木苗に加えて、4千万本に及ぶ各種野菜の自根苗の生産も行われています。発芽から繁殖、接ぎ木、そして接ぎ合わせた植物が活着するまでの「養生」に至るすべての工程が、個々に独立し完全制御された環境で進められます。
養生を行うエリアでは、高度な制御システムが、特定の接ぎ木に必要な温度、湿度、照明、時間を最適な状態に保つことで活着率を高めます。この過程で活躍するのが、室内全体の温度を均一に保ち、さらに気流と衛生状態の維持にも重要な役割を果たす、28台のギュントナーDUAL COMPACTエアクーラーです。
また、養生エリアでは厳しい衛生規則のもとに、専門スタッフが定期的に清掃、消毒を行っています。ドイツ国TÜV Süd によるHACCP認証を受けた製品として、ギュントナーDUAL COMPACTエアクーラーには、清掃と消毒の作業効率を高める特別設計が施されています。「統合型凝縮水ポンプは、弊社エアクーラー独自の機能です」とDaiは言います。「清掃が楽になるだけでなく、外観もすっきりし、設置エリアで高さをより確保することができます。また、エアクーラーはヒンジ式トレイを採用しているので、どちら側からでも開くことができ、清掃や点検が簡単にできます。」
ハイテク技術を駆使する苗木生産施設には、広西チワン族自治区の各地から企業幹部や研究者グループが毎日のように訪れ、先進技術がどのように活用されているかを視察しています。人口増加によって生じる食糧供給問題にどう対応していくのか、ひとつの示唆を与える事例です。