バナナを適熟で店頭に届ける
バナナの好みは住んでいる国によって違うかもしれません。日本では、黄色く斑点のある熟したバナナが消費者に好まれます。一方、北欧では、あまり熟していない先端が緑がかったものが人気です。好みはどうあれ、まとめて大量に購入されることが多いバナナの生産量は、全世界で年間1億2,500万t以上になります。バナナは健康にも良く、エネルギーのもとになる炭水化物、心臓機能の調整に関わるカリウムが豊富な栄養の宝庫です。
しかし、このバナナを最適な熟度で店頭に届けるのは、極めて困難な作業です。バナナは熱帯地域に属する150以上の国々で栽培され、まだ青いうちに収穫されます。バナナの旅は、そこから始まります。まず、バナナが「眠りにつく」のに最適な温度13.3°Cに設定した冷蔵コンテナで、目的国に輸送します。これより低い温度は傷みの原因となります。
到着したら、出荷前に熟成を始める必要があります。これは特殊な「熟成室(じゅくせいむろ)」で行われます。無害な天然の植物ホルモンであるエチレンガスを使用して、バナナそのものから大量のエチレンガスが発生し始めるまでプロセスを刺激します。熟成室はエチレンガスの漏れを防ぐために密閉する必要があり、室温は目指す熟度に応じて14°Cから18°Cの間で厳密に制御しなければなりません。熟成は4〜8日間続きます。
バナナの熟成には高い専門性が求められますが、Güntnerは、この分野で数十年の実績があります。そのGüntnerが手がける冷却システムは、世界中の熟成室で活躍し、例えば、バナナブランド「チキータ」とは、米国およびメキシコで20年以上にわたり連携してきました。
中国では、国内の数多くの事業にGüntnerの技術が活用されています。典型的な例は、多国籍果物輸出業者であるSumifru(スミフル)社の依頼で、広東省の東莞市に15の熟成室を設計・製作した事業です。同社はマレーシアに大規模なバナナ農園を所有しており、東莞市に新設する大規模な熟成施設への投資は、中国の消費者をターゲットとした戦略の一環でした。
スミフル社がGüntnerを採用したのは、バナナの熟成における実績を評価したためで、同社は事業の初期段階からGüntnerの専門知識を活用することができました。Güntnerのエンジニアは、熟成室サイズの推奨、負荷の計算、冷風吹き出し口が1つのソリューションと2つのものの比較、その他多くの詳細事案で、設計段階を通じて積極的に貢献しました。
この事業では、強力なGüntner Dual VARIOエアクーラーを使用しました。高さ6.5mの熟成室は2層に分かれ、各層では通路を真ん中にして両側に箱詰めのバナナを積載するパレットが並びます。エアクーラーは、その中央通路上に配置されました。比較的大型の室(むろ)ながら、Güntnerのエアクーラーは、90%~95%の相対湿度を維持しつつ、全てのパレットに対して均一な換気を実現します。
エアクーラーに取り付けられたガイドシートにより、空気は室の側面と下方に押し出され、その後、パレットを通過し、再びクーラーに戻ります。これにより、バナナは熟成過程を通じて万遍なく換気されます。
他のバナナ熟成ソリューションではもっと小型のエアクーラーが使用される傾向にあり、その場合は室の側面に取り付けられますが、これではエネルギー消費がかさみ、換気も均一ではなくなります。Güntnerのエアクーラーは中央通路の上に位置しているため、洗浄や保守点検の際のアクセスも容易です。また、設計上の工夫により、ユニットを簡単に開けて洗浄することができます。
東莞市にある15の熟成室は、合計2万5,000箱以上のバナナを保管でき、容量は34万kg以上になります。2018年に稼働を始めて以来、現在までトラブルは一切なく、最適熟度のバナナを中国市場に送り出しています。