水の消費量を削減したドバイの野菜栽培
世界人口の増加に伴い、水はこれまでになく貴重な資源となっています。水の使用量を目的別で見ると、およそ70%が農業用水となりますが、その多くが非効率的なやり方で浪費されています。そのような中で、ドバイで進められている新事業は、より持続可能な作物栽培を実現する未来への道筋をはっきりと示しています。
アル・マクトゥーム国際空港にほど近いところに、世界最大の垂直農園があります。「あなたの農園」を意味するBustanicaという農業施設は、広さ約3万600㎡、100以上の航空会社にケータリングサービスを提供するエミレーツ航空ケータリングと、垂直農法のスペシャリストであるCrop Oneによる共同ベンチャーです。2022年7月にオープンした農園は、水使用量を従来型農法比で95%減らすと同時に、年間100万キロ超の葉物野菜の生産を可能にするシステムを整えています。
Bustanicaの成功の鍵となっているのが、農園を支える強力な新技術です。農園内のクローズドループシステムは植物を通じて水を循環させます。蒸気から水を回収し、システムに取り込むことで水を再利用します。この方法で、従来の農法での生産量を維持したまま、年間2億5000万ℓの節水を実現します。農学者、エンジニア、園芸家、植物科学者からなる高度な専門チームは、生産サイクルにAIおよび機械学習を活用、農薬や除草剤、化学薬品を使用することなく、新鮮でクリーンな野菜を確実に栽培します。レタスやルッコラ、緑黄色野菜ミックス、ほうれん草は、洗浄不要で袋から出してそのまま食べることができます。
Bustanica農園でとれた葉物野菜は、エミレーツをはじめとする航空会社の機内サービスで楽しむことができますが、このほど、国内の消費者もスーパーマーケットでこれらの野菜を購入できるようになりました。葉物以外の野菜や果物の栽培も検討が始まっています。
施設では常時100万株を超える植物が栽培され、1日当たりの生産量は3,000kgになりますが、生産した野菜はすべて、どこかに貯蔵しなければなりません。
遡ること2021年6月、Güntnerは農園の冷蔵貯蔵および袋詰め加工施設に最適化された冷却システムの提供を請け負う冷蔵契約業者から問い合わせを受けました。冷却システムは、出荷前に各種野菜を貯蔵・袋詰めするにあたり、温度を1℃から4℃の間に維持できるものでなければなりません。夏には気温が40℃に達することが常である土地柄では至難の業です。
Güntner中東地域事業所でエンジニアリング部門のリーダーを務めるルクマン・ファラツ・サイエドは話します。「その業者とは、既に15年以上にわたり極めて良好な関係を築き上げていました。またGüntnerはエミレーツグループ内でもよく知られたブランドで、ケータリング施設のいくつかでは既に当社製品が導入されていました。それら導入済みユニットの確かな実績は、お客様に信頼できるブランドであるとの確信を持っていただくのに大きな役割を果たします。」
そうはいっても、簡単なプロジェクトではありませんでした。サイエドは、「世界でも有数の航空ネットワークを有する複数の航空会社と同時に地元スーパーへの供給も担う、世界最大級のケータリングサービスです」と指摘します。
農園に導入された冷却ソリューションは、Güntner Cubic COMPACTエアクーラー、Güntner Cubic VARIOエアクーラー、 Güntner Vertical COMPACTコンデンサを使用しています。 ドバイ首長であるシェイク・ハムダーン・ビン・ラーシド・ムハンマド・アール・マクトゥーム殿下による施設訪問では、生鮮食品生産の自給自足を推し進め、UAEでの持続可能性の確保を促す技術が応用されていることを喜ばしく思うとの言葉が伝えられました。