フォーカス:アディアバティック冷却
水および電力の使用は、財政および環境上の理由から、企業および団体組織にとってますます大きな関心事となっています。アディアバティック冷却は、インテリジェントなコントローラと連携することで、水および電力消費量の削減に大きく貢献します。断熱技術はまた、自然冷媒を使った冷蔵冷却システムの可能性をさらに押し広げるとともに、将来性ある冷却システムの構築を促すことで、世界的な気温上昇に対応します。
「アディアバティック冷却システムは、これまで一般的に使用されてきた冷却塔に比べ、非常に多くのメリットをもたらします。世界各地で水不足が報告されるようになっている昨今、水の枯渇が深刻化する地域では特に有効です」Güntnerでプロジェクトコーディネーターを務めるRaúl Alanísは言います。「Güntnerは長年にわたり、アディアバティック冷却分野をリードしてきました。私たちはその技術力を活かし、性能はもちろんのこと、環境負荷、操業コストの面でもこれまで以上の利点を備えた空冷式熱交換器(ACHE)や、コンデンサ、ドライクーラーを生み出します。」
環境および経済的背景
節水や省エネを推進する背景には、差し迫った理由があります。
需要の拡大、汚染や公害、そして特に気候変動は、世界の多くの地域で水不足を引き起こしています。その結果、水使用量の削減に全力を尽くすよう、企業は規制および倫理上の強い圧力を受けるようになっています。また、財政上やむを得ないという側面もあります。需要と供給の法則は地球上で最も貴重な資源にも等しく当てはまり、広範囲において水の価格が上昇し続けているのです。
省エネの推進にも、合理的な理由があります。世界各国が温室効果ガスの排出量を正味ゼロにする「ネットゼロ」を目指し、再生可能エネルギー源への転換を進める一方で、再生可能エネルギーだけを使用しているという国は、ほんのわずかしかありません。世界のエネルギーの約80%が依然として石炭、石油、天然ガスを含む化石燃料によって供給されています。そしてこの化石燃料は、温室効果ガス排出量の75%以上を構成しているのです。昨今みられる地理的な位置関係を要因とする政治的、軍事的、社会的な緊張の高まりは、電力価格の急騰を引き起こし、その影響は多くの国や地域に広がっています。水力発電に大きく依存しているブラジルのような国でさえ、水不足を要因とする電力価格の高騰が起きています。
水およびエネルギー源の逼迫は、この先も続いてゆく傾向にあります。
技術
Güntnerのアディアバティック冷却システムは、従来の冷却塔と比べ大幅な節水およびエネルギー効率アップを実現し、それ以外にも数々のメリットをもたらします。
従来の冷却塔や蒸発冷却システムは、大量の水を消費します。これに対しアディアバティック冷却システムは、ほとんどの時間、乾式冷却システムとして稼働し、周囲温度が非常に高い場合や、冷却システム全体に特に負荷がかかっている場合にのみ水を使用します。
Güntnerは、Güntnerグループ企業の一つであるJAEGGIとの連携により、アディアバティック技術分野で10年以上にわたり先頭を走り続けています。hydroBLU搭載のアディアバティック冷却システムは、最先端の熱交換およびコントローラ技術を特徴とするテクノロジーで、水を用いた従来の冷却システムと比較して、水消費量を最大90%削減します。また、40kWから2,500kWと幅広い冷却能力で各種ユニットを揃えています。必要なときは湿式、不要なときは乾式と、hydroBLUにより、水冷式熱交換器のシステム効率を兼ね備えたソリューションが 、ドライクーラーおよびコンデンサの信頼性と使いやすさを実現します。
「最も重要なのは、これをシステムとして開発したということです」Güntnerの次世代ソリューション部門でリーダーを務めるHerbert Schupferは言います。「私たちは、パッドを取り付け、大量の散水を開始させるという、初期のソリューションによくあるやり方を単に踏襲したのではありません。GüntnerのGHMコントローラは、気温、湿度といった環境データや、使用できる水量、予想される蒸発量にもとづいて水の使用量を最適化する、特許取得済みアルゴリズムを搭載しています。水使用量や性能、省エネ量は、ユーザー側で設定することができます。」
Güntnerの専門家たちは、水またはエネルギーどちらかの削減の最適化に関するユーザーの希望に加え、取り付ける地域の過去の気象データも反映した冷却システムを構成します。システムを一旦起動させると、内蔵されたスマートコントローラが全ての重要なパラメーターを常にモニターし、運転モードを主要条件に合うよう自動調整します。これによって操業コストを抑え、個々のユニットを最適化できます。
Güntnerは近年、より厚みのある新型パットを取り入れたhydroBLUを再開発しました。厚みが増したことで、散水過程の効率がぐっと上がります。パットシステムも改良し、従来型に比べ全てのコンポーネントにアクセスしやすくしたことで、取り付けやメンテナンスがさらに簡単になりました。
カリフォルニア州モンタギューにある工場でGüntnerは、電力および水の年間消費量について、hydroBLU付きユニットと従来型の蒸発冷却ユニットの比較評価を行いました。hydroBLUは、電力と水にかかる総費用を年間45%、水消費量では80%削減しました。蒸発式クーラーの年間水消費量490万リットルに対し、hydroBLU付きドライクーラーの年間水消費量はそれをはるかに下回る98.4万リットルでした。
Güntnerのアディアバティック技術には、水とエネルギー消費を抑える以外にも数々のメリットがあります。水処理も化学物質も必要としないので、メンテナンスにほとんど手がかかりません。衛生面としては、エアロゾルの形成や滞留水が蓄積することがないので、菌の蔓延リスクを最小限に抑えます。また、熱交換器コイルは完全に乾いた状態なので、フィンへの沈殿物付着を防ぎます。
レトロフィットサービス
使用中のシステムを手軽に改造し、様々なメリットを新たに提供します。
Güntnerグループは欧州を対象地域として、使用中の 冷蔵・冷却システムにhydroBLUを追加するレトロフィットサービスを提供しています。
「とても簡単な作業なので、作業に数日しかかかりません。お手元のシステムは取り付け作業中もそのまま運転を続けていただけます」JAEGGI社取締役のMarco Baumannは言います。「改造のメリットおよび、投資に見合う収益が得られるまでにどの程度かかるかといったことを、こちら側で事前に算出することができます。」
レトロフィットは、水および電力消費量を抑えるだけではなく、危機管理戦略としても有効です。もし予想される通り、世界規模で気温上昇が続いていけば、5年、10年前の設計に基づくシステムでは、ピーク時に対する処理能力が近いうちに限界に達する可能性があります。レトロフィットでhydroBLUを取り付けることで、将来まで安心して使えるシステムが低コストで実現します。
欧州を拠点とする、ある大手スーパーマーケットチェーンでは、既にこのやり方を進めています。2021年、猛暑が続く中、フランスのある店舗で冷却システムに問題が生じました。Güntnerは、従来のシステムにhydroBLUを取り付けることでその問題を解決しました。その結果に強く感銘を受けたスーパーマーケットチェーン側は、引き続き、フランス、ハンガリー、ドイツ、キプロスの数多くの店舗のシステムでもレトロフィットを行いました。また、アディアバティックシステムのメリットを目にした同チェーンは現在、新規プロジェクトや温暖な地域における既存システムのレトロフィットにも、当然のことながらhydroBLUを導入しています。
hydroBLUのレトロフィットは、エネルギー使用の削減が国によって規定されている地域においても、手軽で費用対効果に優れたソリューションとなります。
「先ごろフランスでは規制が改められ、建物内の総エネルギー効率の向上が企業に義務づけられるようになりました」Schupferは話します。「財政上および持続可能性の確保を理由に、これまでも省エネ対策に励んできた中での規制改正だったため、多くの企業がさらなる削減に向けた方策を模索していました。そうした状況で、レトロフィットは大幅な改良を必要としない、比較的低コストのソリューションです。」
アディアバティック冷却の実績
アディアバティックシステムは、幅広い業界、特に、空調システム、加工処理過程での冷却、冷蔵、そしてデータセンターのソリューションとして応用できます。
空調システム(米国)
ディスカウントストアを展開する社は、全米に広がる24の配送センターにおける冷却システムの改良を決めました。その際に重要事項となったのが水使用量の削減だったことから、Dollar Tree社はGüntnerのhydroBLU搭載High Density Ammonia コンデンサを選びました。「従来の冷却塔に比べ、水消費量を60~90%減らせるのが決め手でした」Güntnerで米国営業部長を務めるNeil Boucherは言います。「数百万リットルの節水が可能になります。」
加工処理過程での冷却(メキシコ)
メキシコにある家電製品の製造大手では、国内の全工場で水消費量を減らす必要がありました。そこで導入したのが、hydroBLU付きGüntner V-shape VARIOクーラーです。取り付けのしやすさと容量、豊富な設定メニューが、エアコンプレッサールーム冷却システムにとっての最適なチョイスでした。
データセンター(中国)
中国北部の張家口市にある国内最大級のeコマース(電子商取引)企業は、データセンターに液浸冷却を採用しています。液浸冷却のデータセンターへの導入は近年著しく進んでいますが、このシステムでは、サーバーは特殊な絶縁性液状物質の中に密閉されています。液体は蒸発後、室内上部にある冷却用スパイラル上で凝結します。また、建物の外に取り付けられた4台のhydroBLU付きGüntner V-shape VARIOクーラーが熱を放出します。この方法により、同データセンターは、従来の冷却システムに比べ95%の冷却エネルギー量、80%の冷却コストを削減しました。
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データセンター(米国)
仮想通貨のマイニングは、大量の電力を消費するので、マイニング企業はできるだけコストが低い地域に移る傾向にあります。ある企業が拠点を定めたテキサス州の遠隔地は、低コストというメリットがある一方で、水資源には乏しい土地でした。そこで同社は、断熱ソリューションであるhydroBLU付きGüntner V-shape VARIOクーラーを選択しました。40台のユニットが、最低限の水使用で最も優れた稼働効率を実現します。
アディアバティックおよび自然冷媒
Güntnerは、自然冷媒、特に二酸化炭素、アンモニア、炭化水素に価値を認め、長年その活用を推進してきました。アディアバティック冷却は、自然冷媒を使用するあらゆるシステムでメリットがありますが、特に温暖および暑い気候の中で、トランスクリティカルモードにおけるCO₂冷却システム稼働効率をアップさせます。
卸売・アウトレット(中国・二酸化炭素)
ドイツの現金取引制卸売業チェーンであるMetroは、その土地の経済状況に適う限り、2030年までに世界の全店舗に自然冷媒を導入することを計画しています。北京のアウトレットにある、中国初のトランスクリティカルCO₂工場もその一つです。夏季には最高温度が40℃に達する北京ですが、GüntnerのhydroBLU付きV-shape VARIOガスクーラーのおかげで、コイルに触れる空気の温度は劇的に下がり、COPを最大50%減らします。
アイススケート場(中国・二酸化炭素)
2022年に行われたオリンピックおよび冬期パラリンピックでは、出来る限り持続可能性に配慮した催しとすることが宣言されました。この宣言に沿って、通称「アイスリボン」、広さ1万2,000㎡を誇る北京の新国立スピードスケーティング場では、トランスクリティカルCO₂を使った冷却システムによって温度が一定に保たれています。この中国で最大のCO₂プロジェクトでは、hydroBLU付きV-shape VARIOガスクーラー6台が稼働しています。
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配送センター(メキシコ・二酸化炭素)
メキシコで最大級となるCO₂冷蔵施設では、Güntner V-shape Gas Coolers with hydroBLU ガスクーラー2台が運転をしっかりとサポートしています。メキシコシティにあるこの配送センターでは、冷蔵貯蔵室および食品加工エリアを有していることから、地球温暖化のリスク低減、効率性の最大化、自然冷媒の使用、水消費量カット、これら全ての条件を満たすシステムが求められていました。
産業用冷却(メキシコ・アンモニア)
日常用水の汲みだしに巨大な地下の帯水層の貯水が追いつかないメキシコシティでは、水不足の発生は日常茶飯事です。地元のインフラ整備を手がけるArcosa社は、国内大手ファーストフードチェーンで使用する冷蔵室と急速冷凍工場の新設を請け負いました。同社が選んだのは、単独冷却システム内に設置するhydroBLU付きGüntner V-shape VARIOコンデンサです。新旧両方の工場で使用でき、水および電力コスト節約も実現するアンモニア冷媒を使用しています。
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食肉加工設備(米国・アンモニア)
米国に拠点を置くある食肉加工ブランドは、消費者の好みだけでなく、業界内での最高品質と安全基準も重視していました。選ばれたのは、hydroBLU付きGüntner V-shape VARIOコンデンサと連携する低コストなアンモニアシステムです。操業コストを抑え、メンテナンスもより手軽にできるようになりました。