焦点:ヒートポンプ

かつては特殊な技術とされていたヒートポンプは、現在では様々な分野に普及しつつあります。ヒートポンプは、少量の電力で建物内の冷暖房と給湯を行う省エネ技術で、熱利用の脱炭素化に重要な役割を果たすものとして注目が高まっています。革新的なヒートポンプ技術はますます高効率化し、投資利益率(ROI)を押し上げ、従来の熱源との価格差を埋めています。また、多くの国々では、ヒートポンプ設置が助成の対象となっています。

Güntnerで再生可能エネルギーソリューション部門を統括するMarc Giesekingは、次のように話します。「持続可能性はGüntnerのDNAに根差すものです。当社のソリューションが世界中のヒートポンプ事業に着々と採用され始めていることを誇りに思います。Güntnerのヒートポンプ技術は既に実証済みであり、また実装についても長年積み上げてきた確かな実績があります。」

ヒートポンプ導入が進む背景

環境問題への懸念、持続可能なソリューションの需要、ガス供給の問題などが導入の推進力となっています。

ヒートポンプは電気を原動力とするため、稼働地点で二酸化炭素が排出されることはありません。また、発電が温室効果ガスを発生させることは往々にしてあるものの、太陽光や風力、水力などの再生可能エネルギーを熱源としていくことで、ヒートポンプの環境負荷はさらに小さくなります。

国際エネルギー機関による最近の報告書は、次のように述べています。「電力供給に伴うCO₂排出量削減に対する即効性、技術効率の継続的な向上により、ヒートポンプは2025年までに全ての地域でガス式コンデンシングボイラーを下回るCO₂排出を記録するはずである。」

従来の天然ガスボイラーが排出する二酸化炭素に対する懸念に加え、最近では地政学的な緊張の高まりによってガス供給に関する問題も生じており、ヒートポンプへの移行にさらに拍車がかかっています。

これらの要因を背景に、政府や地方自治体は現在、ヒートポンプの導入を促進する様々な政策を実施しています。以下にいくつかご紹介します。

エネルギー保障政策


2022年、欧州委員会は、ロシア産ガスへの依存から脱却すべくREPowerEU計画を発表しました。そこでは、2030年までに約6,000万台のヒートポンプを設置することが目標の1つに掲げられています。

建築基準および規制の改定

世界の国々・地域で、二酸化炭素排出量の削減を目指す新たな法整備が進んでいます。2022年初めに発効したフランスの新しい建築エネルギー基準は、建物空間における冷暖房システムが排出する二酸化炭素量を規定しています。これにより、新築住宅での化石燃料の使用を実質的に漸次廃止していくことを狙っています。カリフォルニア州では、2021年にヒートポンプが基本の冷暖房技術として選定されました。つまり、新たな建造物のエネルギー効率は、ヒートポンプと同等またはそれ以上でなければなりません。

大気汚染防止政策

石炭を燃料とする暖房を多用している地域では、大気汚染防止政策がヒートポンプの使用を促進しています。

補助金

米国のビルド・バック・ベター法案のほか、カナダや欧州各国が進める同様のプログラムなど、ヒートポンプの購入を奨励する財政・財務的支援は世界で拡がりを見せています。

価格調整

通常、電気は天然ガスよりも高価ですが、多くの国は財政的支援と価格政策で価格のバランスをとり、ヒートポンプを導入しやすいものにしています。

最適なヒートポンプ

ヒートポンプには様々なタイプがあります

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ヒートポンプは、空気熱、地中熱、水熱など、何を熱源とするかによって区別できます。世界的には、日本や欧州、北米を中心に、空気熱源ヒートポンプが住宅暖房市場を独占しています。

空気は身の回りのどこにでもあり、自由に利用できるエネルギー源です。柔軟性が高く、特別な許可申請も必要ありません。空気熱ヒートポンプは、単体の熱源としても、水熱や地中熱など複数の熱源を組み合わせた暖房システムの補助としても使用できます。複数の熱源と組み合わせる場合、夏季には地中熱交換器も使用できるので、大幅なコストパフォーマンス向上が期待できます。

Güntnerの再生可能エネルギーソリューション技術スペシャリスト、Franz Sperlは次のように話します。「事実上、空気熱源ヒートポンプは将来まで安心して使い続けられるシステムと言えます。供給制限や価格高騰の懸念がある石油やガスとは異なり、この熱源は必要とする限り確実に利用できるのです。」

ヒートポンプの応用分野

ヒートポンプの効率は地域の気候に左右されます。

ヒートポンプ式温水暖房(ATW)は、システムと設計に応じて、ほぼどこにでも設置できます。現在この技術の応用で世界をリードするのはスカンジナビア諸国ですが、成績係数(COP)マップを見ると、ヒートポンプは季節性COPの大きい欧州地域の他の国々で大きな潜在性を秘めています。ヒートポンプは給湯用に通年使用でき、省エネと二酸化炭素排出量削減に大きく貢献します。また、従来のHVAC冷却システムに統合して、夏季には冷房、冬季には暖房の用途で使用することも可能です(複数の熱源と連携)。

Güntnerのヒートポンプ技術

Güntnerには、ヒートポンプ用熱交換器の製造で40年以上の実績があります。

ヒートポンプ市場に長年携わってきたことで、Güntnerは、市場の成長をつぶさに観察してきました。

「再生可能エネルギーの利用が始まったばかりの頃、原動力となっていたのはスーパーマーケットで、かなりの期間、ヒートポンプの導入に積極的に取り組んでいました。」「その後、スカンジナビア諸国の地域熱供給市場が急成長しました。最近では、ヒートポンプは従来のHVAC市場の他にも、工場やショッピングモール、ホテルなど様々な所で普及し始めています。現在、多くのお客様がヒートポンプを使ったソリューションをご希望ですが、実装方法に対する助言や提案は不可欠であり、Güntnerでは各種のご相談を承っています。」
FRANZ SPERL ギュントナー プロダクト・マネージャー

Giesekingが付け加えます。「また、当社が既にソリューションを市場に送り出し、確かな成果を約束する実績を築き上げていることも注目に値するでしょう。」Güntnerの熱交換器は、幅広い形状(フラット、キューブ、V字、縦型)とサイズを揃え、あらゆる用途に最適なソリューションを提供します。いずれも自然冷媒と併用でき、環境上の有益性がさらに高まります。Güntnerでは、設置方法の提案も行っています。例えば、配置は熱交換器の効率に大きく影響します。ユニット同士の間隔、地上からの高さ、建物や壁の近さなど、多くの要素を考慮して配置を考えていく必要があります。

ヒートポンプの実績

多岐にわたる用途でヒートポンプの効果を実感いただいています。

スーパーマーケット(欧州)
スーパーマーケットの設計戦略として一般化しつつあるのが、通常の冷却システムに組み込める、比較的小型の屋外ヒートポンプ蒸発器の設置です。一年の大部分で、冷蔵キャビネットからの排熱だけで店内の暖房を賄うことができますが、寒冷時にはヒートポンプ蒸発器が追加の暖房ニーズを補います。Güntnerは、欧州全土でこのタイプの事業を数多く手掛けています。
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スーパーマーケット(英国)

英国の小売大手の1つは、所有するスーパーマーケット内のCO₂冷蔵設備と自社の機械式熱供給システムとを統合するソリューションの開発を冷蔵設備会社Ryan-Jaybergに依頼しました。GüntnerはCubic VARIOエアクーラーを供給、同社と共同で冷蔵需要が低い時期に熱出力を高める外部蒸発器コイルを開発しました。独立したシステムを設置する場合と比較して、資本コストを抑えながら二酸化炭素排出量も削減する一挙両得のソリューションとなりました。

地域熱供給(デンマーク)
デンマークの家庭のおよそ3分の2は、地域熱供給の恩恵を受けています。しかし、システムの電力供給に使用されるエネルギーの約3分の1は化石燃料に由来しています。フュン島の港町ファボルグでは、Güntner Flat VARIO熱交換器32台が熱を集め、再生可能エネルギーを利用する空気熱源ヒートポンプシステムを支えています。このシステムにより、1ユーザーあたり年間6tの温室効果ガス排出を抑制できると計算されています。これは、欧州-ニューヨーク間の飛行4往復分に相当します。
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HVAC(スイス)
スイスのアードルフに最近建設されたワークスペース商工業パークでは、リバーシブルヒートポンプの利点を目にすることができます。パーク内のビル3棟に入居する70社が、太陽光熱源および空気熱源ヒートポンプによる暖房と冷房の両方を利用しています。このシステムは、ヒートポンプを専門とするHeim AG社が設計・製造するもので、Güntner V-shape VARIO熱交換器が採用されています。