中国の都市に再生可能エネルギーを届ける
中国南西部には、「世界最大のクリーンエネルギー回廊」があります。広大な長江とその支流である金沙江の上流に広がる巨大水力発電ダム群です。中国の「西電東送(西部で発電した電力を東部の消費地に送電する)」戦略の基盤として、それらのダム群は電力需要の高い東部産業都市向けの発電を行っています。中国のエネルギー政策で水力の果たす役割は極めて大きく、国内発電のおよそ5分の1を占めています。2060年までにカーボンニュートラル実現を目指す同国にとって、水力発電は国家目標達成のカギを握る重大な要素となるでしょう。
回廊に新しく加わった水力発電所(総容量では世界第2位)は、白鶴灘にあります。340億米ドルをかけて建設された白鶴灘水力発電所は、2022年末から全面稼働を開始し、16基のタービンは16,000MWの総設備容量を誇ります。従来の石炭火力発電に代わるシステムとして、年間5000万tの二酸化炭素排出量を削減すると推計されています。
白鶴灘水力発電所で生成された電力を数千キロメートル離れた江蘇省や浙江省の東部主要産業地域まで安定して伝送するためには、まず電流を交流から直流に変換する必要があります。この変換を行うため特別に建設されたのが布拖変電所です。サッカーコート約90面に相当する広さで、敷地面積でも送電容量でも世界最大級となります。
変電所の中心にあるのは、交直変換を行うバルブホールです。稼働中、バルブからは大量の熱が発生します。安全性と安定性確保には冷却が必要ですが、不純物がバルブに影響しないよう、冷却システムには「超純水」が使用されます。汚染要因となり得る物質を可能な限り取り除き、極めて高純度になるまで精製された水です。
衛生面に関する厳密さは冷却システムに使用する装置についても求められ、ここでギュントナーの出番となりました。取り付けられたのは、最高水準の清浄度を実現するよう設計された特注ユニットGüntner Flat VARIOドライクーラー16台です。特別な衛生処理を施したユニットでは、コイルが長期間にわたり清潔に保たれるため、超純水冷却媒体を頻繁に交換する必要がありません。
変換バルブ冷却システムのもう1つの要件は、バルブの稼働温度を正常域に保つのに十分な冷却容量を確保することでした。 Güntner Flat VARIOドライクーラーのクローズドループ設計は、冷却媒体の損失を最小限に抑え、バルブが安定して稼働できるようにします。
いったん直流に変換された電力は、5省19都市59地域・地区に送電されます。その電力消費地では、中国の経済的繁栄だけでなく、持続可能性確保にも大きく貢献しています。